
例の話題の件について。
販売とかしてないですが雑種を作ってる人間の一人として書いておこうかなと。
事情を知らない人は何のことかよく分からないだろうし、問題提起・呼びかけの内容なので書き起こします(キャプしか見てないですが)。
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●雑交配種の氾濫
エケベリアの実生雑交の無線別苗が大量に出回り始めた。アメリカ、そして日本から。一応○○×○○と品種親名が出ていても並べてみれば両方につながり、各々の顔の区切りが判らない。混乱して面白さが無くなった。業者も困惑している。かつて日本でメセンの名園がコノフィツムの雑種をつくりすぎ、サボテンでもギムノカリキゥムでも同じことが起き、「優系ギムノを守る会」ができたが時すでに遅しでいづれもブームは去った。ランポー玉もその轍を踏んだ。今、世界的に人気のハオルシアが同じ道を進み始めた。きちんとした名前を残し、確立すべく日本ハオルシア協会が名称本を製作しているが世界同時進行の大波に追随できるか。「よい物のみを選択し、後に残す」を皆が実践しないといけない。
I.S.I.J. Newsletter No.169 より引用
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「親の組み合わせだけが書かれた(特に名前のついてない)苗」=「無選別苗」という前提で書かれています。
これは「名前付き=選抜された苗」「親の名前のみ=選抜落ち(に近い、名前をつけるほどの物ではない)」という慣例というか暗黙の了解があるからだと思われます。
(実際は業者でも個人でも色々と差がある。「選抜はしたが特に名前はまだないので親の名前を書いたモノ」は選抜されていようがいまいが、傍目から見れば「無選抜の苗」と受け取られてもしょうがないということ。数が多ければ尚更そういう印象を受ける。)
なので、「親の名前のみ=選抜落ち」が大量に売られているのが良くない、という主旨ではないかと思います。
それで “きちんとした名前を残し確立(する)” ことが “よい物のみを選択し、後に残す”
に繋がるということで後半ハオルシア協会の名称本(ハオルシア品種名総覧)について触れているのではないかと。
つまり「選抜してから名前をつけて売れ」ということを書いているのではないでしょうか。
誌面・字数の問題かもしれませんが『ハオルシア品種名総覧』を引き合いに出すなら、個人的には「選抜・完成度の問題」と「手続き・出版上の問題」が途中で若干すり替わり気味という印象。
選抜して名前がついていれば良い、ということでもないです。
完成度がどうのこうの、ということ以前に「出版・記載が伴っていない」というのが根本的な問題の一つではないかと思います。
品種(cultivar)は出版を伴ってはじめて正式なもの。
出版・説明がなされていないということは第三者から基準となるものがないので判断のしようもなく、選抜をしたとかしてないとか言ってもしょうがない。
名前をつけて品種として主張したいとしても、手続き上の不備があることが明らか。
(名付けている人は品種名には禁止行為や使ってはいけない単語なんかもありますがその辺りも把握して命名されていますか?広く認知されて市民権を得たとしても規約に違反した名前はいずれ問題になります。)
もちろん今日となっては正式に出版された品種のほうが少ないということはわかってはいますが、だからと言って無視して良いということでもないでしょう。
一方でキチンと出版されたからこそ、名前が残っている品種というのが多数あるのもまた事実。
他の植物業界の事情は詳しくありませんが品種管理に厳しい蘭(食虫植物も?)で同じことをすればより厳しい批難を浴びるのではないでしょうか?
この手の問題に敏感な人はたぶんどこにでもいると思います。
出版のハードルが高いのは承知ですが、ある程度代替手段を講じておくのも混乱解消の役に立つのでは。
参考リンク:
○品種名等暫定リストについて(品種というものについて説明されているので必読)
http://www.haworthia.net/about%20the%20list.pdf
○日本ハオルシア協会
http://www.haworthia.net/
エケベリアよりハオルシアの雑種のほうがよほど氾濫していると思うけど(顔と名前が一致しないものはベンケイソウ科のほうが多いか)、とにかくハオルシア協会が優良なものについては品種として出版したり膨大な労力を費やしています。
物理的な作業以外にも業者や個人趣味家・育種家との軋轢というか摩擦や苦労が見え隠れしているというか(実際はわからないですが)。
私がハオルシア協会に好意的なことを書いているのは、日本の多肉業界が疎かにしがちな「品種確立についての規約に則った正しい方法・手順」ついて切り込み、遵守しようとしていることへの敬意からです。
いずれ議論が起きるべき内容だったと思うし、その契機になったことも重要な功績だと思います。
◆出版無しで自前で作った雑種に“名前をつけて流通させる・販売する”
―本質的な問題はここにあると思う。
―需要があるとかないとか置いておいて恐らく規約上誉められる行為ではない。
―何か具体的な規約に違反してるか非推奨行為扱いされている・・・のではないかと思うんで資料転がってないか調べてるんだけどしんどいので誰か教えて下さい。
業者か個人かという点について、「生活の為なんだ」と業者の人に言われてしまうと・・・。
個人的に議論というか相談してみた結果としては物理的なこととか、あの辺の関係とか・・・色々と難しいそうです。
ボヤかして申し訳ないんですが諸々察して欲しいです。
【"雑交配種"という呼び方について】
『雑種』・『交雑種』というのは正しい用語。
種(species)のレベルとしてみると純粋な原種ではなく、雑種。
『雑交配』というのも意味としては『交雑』と同様に使われている言葉。
『交配種』というのは【雑】という字のネガティブな印象を嫌う人たちが使っている言葉・・・とかそんな感じ。
イヌ・ネコでいう『ミックス』とかそんな呼び方に近い印象。
hybrid も訳は雑種。
ハイブリッドとカタカナで書けば【雑】という字を使わないだけマイルドになったとかそんなことだろう。
交配・・・(主に人為的な)受粉作業。雑種にするかどうか基本的な焦点ではない。
交雑・・・雑種になる・雑種にさせること。2つ以上の種が混ざっていることが焦点。
こんな感じのニュアンスが多数派。
『交配種』も辞書に載り始めているみたいだけど、まだ簡単で曖昧な説明になっている。
http://kotobank.jp/word/%E4%BA%A4%E9%85%8D%E7%A8%AE
なのでこの blog では『交配種』という言葉は使わずに人為的に作られたものでも『雑種』という言葉を使うようにしている。
(自然下のものは Natural Hybrid とか書いて区別してる)
科学的な分野の一部なんで出来るだけ正しい用語を使いたい。
間違った使い方してたら教えて下さい。
とりあえず【雑】という字に過剰反応するのは違います。
今回の件でもそうですが出版物の責任者が【雑】という字に反射的に目くじら立てて噛み付く人間との面倒事を回避するため意図的に『交配種』という言葉を使って配慮しているケースや、人為に作られた的な面を強調したいので使ってるケースがあるというのも想像できますが。
でもまあ国際ではサイトや写真集を見る限り『交配種』という言葉を使ってることが多いようなので、今回使われている『雑交配種』という言葉は会報の文章全体からするとマイナス印象をこめて批難の意味で使っていそうではあるけど。
交雑(種)=雑交配(種)ということで使っているというよりは、「雑種を作る交配」というより「雑な交配から出来たモノ」という意味を匂わせる書き方に見えなくもない。
普段どんな内容なのか知らないし、本来は特にネガティブなイメージの単語ではないので邪推ですが。
それよりも個人的に気になるのは「正名のあやふやなモノを親株が使われる」こと。
前から主張していることですが花粉ポフポフより優先すべきことがあるのではないかと。
この blog でも時折触れてきていたことだけどラベル・表記のことと、cultivar/出版
のことについては近いうちに意見まとめてを書こうと思って少しずつまとめてたたんですが良い機会なんで一部載せました。
“ブームが去る”ということについても考えるべきところは多いけど今回は長くなりすぎたんで今度にします。
Comments
paramitsu
出版物として新しい品種を掲載する際の基準が難しいなと思っています。一度試行的にサイトで品種の人気投票をやって、それで人気あったら紙面にまとめて掲載できれば良いと思っていましたが、思いのほか総投票数がなかったです(・・・二重投票とか防ぐためのシステムがめんどくさかったこともあると思いますけど)。
販売名について、具体的な罰則は知りませんが、ここに簡単にまとめてありますよ。
http://www.pcc-gardendesign.net/lesson-E-curriculum/E-nomenclature.htm
現状販売されているハオルシアは品種名なのか販売名なのかがはたから見て区別つかないのでやっかいですが、品種の登録機関ができるまでは容認せざるをえないのかなと思います。本当は品種名がある(出版物に掲載されている)ものはそれに変えてほしいですが・・・。名前が変わることで販売の際に混乱が生じるようであれば( )書きとかで以前の販売名・無効名も併記してあげれば問題ないように思ってます。
まぁ、品種名の混乱で誰か極一般的な消費者がものすごい困ることもないような気もしますが、やっぱりここまで世界的に広がってきている園芸分野なんでつまらんことで衰退しないように硬くいきたいものですね。
・・・いやぁ、長くなりました。すいません。
1911
普段からコメントはあまりつかないですし。
「品種を掲載する際の基準」というのは難しいですよね。
誌面には限りがあるワケですし、特定の業者や趣味家を贔屓にしたようなカタチになれば「出版利権だ!」みたいなことになって反発とか分裂とかに繋がってしまうとマズイですし。
例会の品評で好評だったモノから順に、と言っても間に合いませんしねぇ。
規約を詳しく読んだことがないのでアレですが、“出版すること”の主旨は「(不特定)多数への認知」と「紙媒体での物的証拠を残す」という辺りじゃないかと思うんです。
なので現在なら購読しないと手に入らない刊行物に掲載するよりも、ネットで公開するほうがよっぽど速やかに、幅広く認知されると思うんですよ。
Google document にPDFで保存・アップして公開する、なんていう方法でも出版の代替案になるんじゃないかなと考えたりしてます。
出版されてない名前=販売名(trade designations)、として扱ってしまうのもちょっと違うと思うんですよね。
【品種名(cultivar name)は既にあるが、一般に売りやすい販売名(trade designations)を使う】というより、区別するなら【品種名と未記載品種名】という感じだと思うので。
販売名なんですが、花卉業者など大量生産品がペペロミアの何かにハッピービーンとか、アエオニウムの黒法師にサンシモンとか、もう少し市場規模が大きい場合のことかと思うので、個人売買の延長に近い多肉の市場規模とは事情が変わってくると思うんです。
(たぶん"trade designations"としての要件を満たす方向のほうが難しい?)
すいませんこの辺まだちょっと考えが纏まらないです。
ハオルシアだと名前と顔が一致するものが大多数なんで、かつ品種の作出・発信源は日本が中心なので総覧で正名を確認というだいぶ混乱は解消に向かうと思うんです。
ですがエケベリア他ベンケイソウ科の場合は全体的にハオルシアより酷い状況なんですよ。
EU、OZ、韓国、を巡るうちにどんどん名前が変わったりして、国内普及種と全く同じモノなのにラベルに書いてある名前が目新しいだけで下手すると10倍近い値段で販売されてたり。
ブームっていう現象の悪影響の一つなのかこぞって買われていってしまいます。
授業料と言ってしまえばそれまでかもしれませんがそれが健全な市場とは思えませんし。
「結局正名と言える名前もあるんだかないんだか不明」みたいな植物が物凄く増えてます(以前からたくさんありましたが最近特に)。
これはいずれ後の消費者の不利益に繋がることはあっても、利益になるとは思えない状況です。
マニアックな植物蒐集の楽しみ方もその辺にあるかも、一時的に流通したけど忘れられる消耗品になってしまうような植物も市場には必要なのかも、とも思いますが・・・やっぱりちょっと肯定的には捉えられません。
余談ですがハオルシアの Group name 、アレが受け入れられて馴染んでいくのかなんていうのも気になるところです。
Group epithet なのか Cultivar epithet なのかわからないような販売のされ方が多いので。
多くの問題は結局一人一人ラベルの書き方と読み方の水準がバラバラなところにあると思うんですよね。
カタカナで一つ二つ単語を書いておけばOK、みたいな。
確かにキチンと書くの面倒ですけど・・・。
書ききれなかった内容を吐き出すような返信になってしまって申し訳ないです。
anonymous
大量に実生して新品種を作り出しているA園は、選抜個体に名前を付け、それを繁殖して売っているから、比較的良心的だけど、すでにある有名品種と同じ名前を付けたり、『こんな名前は禁止されているんじゃん」という名前だったりで、むしろ混乱を助長している。たくさん売ってしまえばこっちのもんだ、という気なのか知らないけど、業界のリーダーならリーダーらしくもっと規約を勉強して他業者を指導するくらいでなければいけないんじゃないですかね。専門家連盟で勉強会を開くくらいのリーダーシップが欲しいところです。(彼に期待するのは無理かな?)
販売名だとしても他の品種名とダブっているのは当然ダメでしょうが、平気で開き直るのは全くいただけません。
片や東の雄、B園はやはり相当大量に実生してるんだけど、特徴のない中間型の雑種にまで片っ端から名前を付け、印刷して発表している。玉扇、万象でも同じ。中にはもちろん良いものもあるけど、多くは「どこが違うんだ?」というレベル。当然他品種と区別する特徴の記載はなく、無効発表。名前の浪費に過ぎない。要するに品種じゃないんだということ。
毎月たくさんの新品種(?)を印刷物にする努力には敬意を表したいけど、もう少し良いものだけチャンと選別する必要があるでしょう。
名前を付けなければ売れないという事情もあるかもしれないけど、消費者も馬鹿じゃないから、名前が付いているからって良いものとは限らん、ということにはそろそろみんな気が付いてきている。
同じく大手のC園は他から購入した物を販売するのが中心。ただ、有名品種と微妙に違う別個体を同じ名前で売るのは全くいただけない。下手をすると詐欺。中には記号で別物と表示してあるものもあるけど、全く紛らわしい。そんな紛らわしい名前で売って評判を落とすより、新しい名前を付けるなり、「xxもどき」とか「OO類似個体」とかハッキリ表示する方がよほど商売上手というものでしょうが。
D園は実生個体にグループ名を付けて売っているんだけど、品種名がグループ名に変わっただけで、やはり「どこが違うんだ?」というものが多い。あるいはハオルシア研究に載ったようなピンは違いがわかるけど、キリは全くわからん、という羊頭狗肉販売が多い。ここの名前はネット発表の上にグループの特徴記載もないから全く無効名。おまけにすでにある他品種名とダブっている名前が多いからどうしようもない。重複名を作らないようにするという意識がないのか、それこそ「困ったもんだ」。
特にひどい有力業者はこの4園で、他は「命名規約は守らなくては」という意識だけは少なくともはあるようなのは救いだ。だけどこの有力業者4園が互いに相手をけなし、命名規約どこ吹く風で勝手に規約違反の名前を付けるからそれを見て右に倣えの素人も出てくる。この4園が命名規約を守る姿勢になれば多分混乱は相当収まる。今度のハオルシア協会の品種名の本がそのきっかけになるかどうか、でもあんまり期待しない方がいいかも?
1911
貴重なご意見有難うございます。
後々訂正が必要になってしまうようなネーミングを避けるのは規約どうこう以前のマナーではないかなと・・・。
業者に規約の知識を迫るための方法の1つとして、「消費者側の知識水準を上げる」というのがあると思うんです。
「学名のルールとかちゃんと知っておいたほうがイイのかな?」という人を取りこぼさないようにするためにも超基礎的なことから、園芸・コレクション上でも必要な内容をまとめたwebページがあれば良いのではと。
自分で本を買うなり調べて勉強しなさい、というのは正論中の正論なんですが、素人なりにネットである程度調べていてかなりハードルの高さを感じています。
日本語で説明されているページは知りたい部分が書いてあったりなかったり散発的、全体的に古い、等等。
多肉愛好家の目に付き易い国際や日本多肉のサイトに書いてあると良いと思うんですが・・・正直ちゃんと書ける・書いてくれる人がいるのかいないのか。
私もこの blog で解説しようかと思ったことは何度かあったのですが、やはり所詮素人なので間違った内容をイタズラに広めてしまうかもしれない、詳しくわからない部分が中途半端になる、等の理由で断念しています。
「これミュータントなんて名前が付いてますけど mutant って単語は使えませんよね?」みたいな会話がそこら中で自然に出てくるようになればいいんですけどねぇ・・・。
一定水準以上のコレクション蒐集や売り買いの際にも規約・学名の知識はやはり最低限必要だと思うので、個人・業者含めた愛好家が一丸となって学べる分かり易い教材があれば必ず何かのプラスになるかなと。
品種名総覧はすぐに効果てきめん、とまではいかなくても長期的に見れば今日までに出来た品種を保護していくんじゃないかと思います。
将来すごい便利なメディアにアーカイブ化されてたりすればもっと。
現在でもエケベリアの140年くらい前の資料をフランス人が掘り返して日本人がネットを通じて眺めてたりしますしね。
DMH
ハオ協のお知らせ年賀状の印刷が忙しいのですが、ちょっと一言。
皆さんいろいろご意見、ご指摘、ご提案などがあり、この問題に関心を持ってくださる方が結構いるということに勇気づけられました。
それぞれごもっともなご意見ですが、2,3点追加すると、
まず、販売名は必ず正名をカッコ書きなどで併記することになっています(栽培植物命名規約17条2(旧版15条1))第一、販売名が単独で表記されたら、それが販売名か品種名かわかりません。
そもそも販売名の使用は命名規約の原則6で、支持されないと言明されています。またハオルシアの場合、現状では重複名を使い続ける抜け道とされることが多いので、販売名は原則禁止とし、正名(有効出版された正式名)や正式名(命名規約の基準に合致した名前だが、記載文がないなどで有効出版されていない名前)だけを使うようにすべきです。
したがって品種名には正名、正式名、無効名(命名規約の基準に合致しない名前)があるわけです。ハオルシアの場合、ハオ研誌に載った名前の多くは正名ですが、カタログ発表された品種の多くは記載文がないので正式名となります。ネット上の名前も有効発表ではないので正式名です。重複名やラテン語形の名、型のつく名や「ミュータント」などは無効名です。販売名は品種名でもなく、俗名や通称名の類です。
品種の基準は難しいですが、既存他品種と識別できるような特徴を記載できるかどうかが目安になるでしょう。「写真を見ればわかる」では記載になりませんから、「文字で表現できる程度の違いがある」、ということです。特徴のない中間型の雑種はほとんどこの基準で排除できます。万象などでもこの基準で行くと新しく発表される品種のかなりの部分は品種とはいえない(単なる個体差)ことになります。
最近出てくる万象の多くはハオ研誌4号~8号に山本先生が組み合わせ名だけで紹介した個体群より優れているとは言えないものが大部分です。これら山本氏万象が今日組み合わせ名(3x9-11等)で高値で取引されるわけがわかります。つまり山本先生はラベルなしで個体識別できる程度の差はないとして命名しなかったわけですが、最近の新しい万象品種の多くはこれらと同等以下でしょう。
大手業者の責任論は厳しい指摘ですが、たしかにそのような過去は否定できません。ただ、多少擁護しますと、最近ではこれら業者の方も命名規約は尊重しなければならない、という認識では一致していると思います。
カクタスニシさん(おそらくA園)のHPでも販売名には正名を併記するようになりましたし、いくつかの重複名は改訂されています。ただ西さんいわく、写真集を発行するのに合わせて改名したい、ということでしたが、その写真集の発行が遅れているので改名が進んでいない、という事情があるようです。「ミュータント」の問題は機会あるごとに指摘しているのですが、まだ改訂されていないようです。
佐藤さん(おそらくB園)は基本的に品種名の整理には大変積極的で、協力的です。改名の要請にも応じる、ということですので、重複名や類似名は順次改訂されていくと期待しています。品種基準の問題も『文字で相違点を記載できる程度の違い』という基準が趣味家に浸透していけばそれに合わせざるを得ないでしょう。
山城さん(おそらくC園)は失礼ながら一般的な印象とは異なり、品種名の整理統一にはむしろ大変積極的です。今度の品種名総覧でも山城さんの重複名の整理は『お任せする』ということで、こちらとしてはむしろ改名する名前を考えるのに大変という状態です。
大久保さん(おそらくD園)のグループ名販売はいろいろ批判されていますが、実物写真を出して販売する以上、購入者は納得して買ったものとみなされます。ただ指摘のあったように、グループの記載がなく、したがって特徴もはっきりせず、グループ名が全く意味をなさない、という現状は変える必法があるでしょう。またグループ名に重複名が多いのも確かに問題です。命名規約に対する認識をもう少し高くしてもらえると良いのですが・・・
『消費者側の知識水準を上げる』というのは確かに非常に重要なポイントだと思います。今度の品種名総覧の冒頭にも多少命名規約に関する解説を入れる予定ですが、それとは別に多くのHP(もちろんハオ協のも含めて)で、解説記事を載せてくれるといい加減な命名ができなくなるようになるでしょう。栽培品種命名規約の新版(8版)末尾付録8には命名のチェック手順(名前が規約に合致しているかどうかのチェック手順)が掲載されており、これなどは大変参考になりますからぜひ和訳して紹介したいと思っています。
1911
年跨ぎになってしまってすいません。
名称(学名/品種名/いわゆる和名等)については整理しないといけないと思っていたので大変参考になりました。
個人のコレクションレベルでも「学名・正名あるいは正式名で管理するのが("鑑"賞する意味でも)ベスト」というのを多くの人に理解していただきたいですね。
品種の基準はやはり難しいですね。
個人の目利きや主観的な要素も多分に含まれてきますし。
見分けが付く(優劣が付けられる)→差別化をはかりたい→別の名称がつく・・・というワケで「別のクローンとわかったから別の名前で売る」という人も多いでしょうし。
どこまでが同一品種なのか、どこまでが同一グループなのか、難しいですね・・・。
微細な優劣に価値を見出し高価で親株を購入し厳しい選抜を経てきたものが多いと思うので。
(個人的には多肉なら例外を除けば個体差がないクローン単位が良いと考えています。完成度の点でも。)
規約についてご説明いただけるということで感謝いたします。
色々な面を考慮すると私個人としてもDMH様に解説していただくのがベストだと考えていました。
上で触れた「一人一人ラベルの書き方と読み方の水準がバラバラ」というのは、少し前の国内の図鑑のような本は斑入りには(男性名詞だろうが中性名詞だろうが)なんでも“f. variegata”と付ければOKというような風潮があったので、現在でもそれにならって表記している人もたくさんいたりすることです。
同一ページ内で性がさっぱり一致してないサイトなんかもあります。
中には属名を全く書かず種小名をキャピタライズすると言ったような、規約の基礎を知っていればまずありえないような表記をする人もいたり。
多肉植物写真集2巻で言うなら品種名の前に不要な×記号があったりなかったり。
『品種名はイタリック体にしない』とあっても「あとは全部イタリックなのかな?」という人が少なからず出てきたりすると思います。
なので品種関連だけでなく学名の基礎的な内容も出来ればお願いしたいです。
お時間等の事情で難しいかもしれませんが・・・。
多肉業界以外の他分野にも波及し模範・参考とされるようならばとても素晴らしいですね。
その上で要望を書かせていただきます。
ネット上を見る限り【種】と【品種】の違いを把握しておらず混同している人も多数います。
私も当初【品種】と言う言葉には若干ピンと来なくて、 cultivar を指しているのかどうか迷ったりしました(英文の資料を読んでいたことのほうが多かったからかもしれません)。
【正名】と【正式名】なんかも日本語だとややこしい言葉なので英語で併記してあると分かり易いかと思います。
ちなみに【正式名】というのは原文だとどういう言葉になるのでしょうか?
個人的には「ハオルシアだけの問題」と割り切られてしまわないかが心配です。
エケベリアにも、他の多肉にも、全ての植物に当てはまるルールであるということを個人業者問わず一人々々が認識して現状に関心を持って欲しいです。
ベンケイソウ科の新品種を発表する場は確保されるのか・・・。
アロエなんかも派手な交雑種・品種が多数輸入されているので交配熱が上がってくるかもしれません。
規約が規約が~というと面倒事のように取られてしまいますが「出版作業は自分の作品をネーミング含めて後世に渡って長期的に保護する」、というポジティブな面もアピールしていきたいですね。
DMH
1911
大変参考になりましたありがとうございます。
考えを整理してからお返事したいので少し遅くなると思います。
雑種交配苗が氾濫していますね。
普通に全国の花屋さんなどに卸している多肉農家のブログを見ていて驚いたことがあるんです。
リトープスのミックス種(いろんな種類が混ざってしまっている種子)を播いて、2年ぐらい経った苗に名札を付ける作業をするのに、
リトープス図鑑を見て名札付け作業をしなければならないので忙しくなる・・・と記事に書いている人がいました。
図鑑を見て名前を付けて、それを売るんですよ、いい加減ですよね。
エケベリアの交配も、バカみたいに我先にしないと損、みたいに
交配させている人が最近は多いですね。自分が改良した品種、って権利を持ちたいのかな?って思いますよ。なんでもかんでも交配させて、選別もせずに(2歳ぐらいで売ってしまうのですから選別していない?)。
1911
品種(園芸の植物)には原種も雑種もあってないような面が強いですし、既存の個体群と比較して観賞価値があれば良いので、私はジャンジャン交配してジャンジャン実生したら良いと思っています。
規約が理解されその上で整理されていればおおよその問題はなんとかなります。
実生すればするだけ比例して優良な個体は出てきます。
ピン個体があってそれ以外をどう捌くかはまた難しい部分ではあります。
(個人的には選抜落ちが交配式表記売られていても構わないですが、名前らしきものがないからと言って、とって付けたような品種名もどきの商品名を乱発されると困るかな・・・というところです)
残念ながら、エケベリアに関しては数年前から「個体差があっても良い」や「親株の組み合わせが同じなら同じ名前になる」という認識の方が小苗のうちから販売をしていたのでゴタゴタしてしまっていますが、当初から「新規に命名する際は名前に対しての形態的特徴に一貫性がある」という大前提が守られていて、「具体的な判断基準や特徴を判別文で表現する」という意識があればこんなことにはなっていなかったでしょう。
リトープスは栽培していないので事情や慣例が全然わからないですが、エケベリアなら図鑑で調べて名前を確認しているならマシなほうで、適当な名前がでっち上げられることはウンザリするほどあったりします。
「同じ命名がされているのに顔付きがバラバラなもの」というのはこの先成長した苗がどんどんネットに上がってくるので、またそのときに物議を醸したり定期的な炎上の燃料になるんだろうなあと思っています。
業者というのは園芸業界全体から見れば「多肉のスペシャリスト」ではありますが、属ごとに特化したような愛好者から見れば「ジェネラリストの流通仲介者」なので・・・。
コレクターというのはある種の専門家の一人として趣味の世界に踏み入っているという側面が少なからずあるわけですから、信頼出来る入手経路を確保するのもコレクターとしての力量のうちかなと。
もちろんイイカゲンなラベルで販売されているのは不健全ではありますが。