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第2章は主に ICNCP (国際栽培植物命名規約)について解説されています。


品種名をつける際には ICNCP という取り決めがあります。
たまにそういったものは無いと勘違いしている人もいますが、ちゃんとあります。
ルールの存在の有無と守られているかどうかというのは勘違いしてはいけない部分です。

ICNCP は ICBN (国際植物命名規約:学名のヤツ)をベースに作られているもので、シッカリしてます。
条文で禁止事項やら何やらが書いてあるんですが、正直あまり取っ付き易い感じでもないです。
公式野球規則みたいな感じです。

なので、品種名総覧にはチャート式のチェックリストが掲載されています。
チャートに沿ってチェックすればその名前が適格(規約違反していない)かが分かるようになっているというものです。
「自分の作品に品種名を付けたい」という方には是非活用して欲しいです。
エケベリアや他の植物でも十二分に応用出来るようになっています。
訂正が必要になってしまうような名前で販売・流通させるということは可能な限り減らしていただきたいです。


また、品種名総覧が画期的なのは【日本語】の事情も考慮してあるという点です。
ICNCP は英語圏やヨーロッパ、つまり表音ラテン文字を前提に練られているので、漢字/かな/カナ/ローマ字が入り乱れる日本語には対応しきれない部分が少なからずあり、その辺りの問題も解決出来るようにアレンジしてあります。
序文を寄稿された池谷氏(ICNCP の委員もされているそうです)によると、なんとこういう試みは日本は初なようで、もう多肉とか花卉とか問わず園芸業界者には興味深い内容になっていること間違いナシです。
この序文が簡潔にしてなかなかの名文なので是非呼んでいただきたいところです。

というワケで、品種名総覧ではすべての品種名に日本語表記とローマ字表記の両方掲載されています。
「カナで表記されると元のスペルがワカラン」という人も「なんて読むのかワカラナイ」という人も満足です。
‘御津姫’ とか難読な名前もバッチリだ!





◆ 『発表』について
ここでいう発表というのは「出版物に品種名を掲載する(判別文を伴って)」という意味を持つ用語です。



これは多肉業界では軽視されがちですが、とても大事な作業です。

International Crassulaceae Network
http://crassulaceae.ch/

ベンケイソウ科は主に欧州で同様の品種整理が行われています。
100年以上、ものに拠っては200年近く前に出版された書物からカタログのようなものまで精査されていて驚嘆しました。
これはその名前が何年経とうと保護されているということです。

しかし近年に日本で作出されたと思われる品種はその名前がキチンと伝わっておらず、異名扱いになっていることが増えています。
輸出入の際の連携等が上手くいっていないことが大きな理由だとは思いますが、発表が「あやふや」なままになっているのも理由のひとつでしょう。
(なぜ「あやふや」なのかを説明するのは時間が掛かるんですが、根本的にはハオルシアと似たようなことです。)

つまり『発表』するということは「その品種名を保護する」という作業でもあるということです。
大半のコレクターが共有している「作出者や命名者が付けたオリジナルの名前は尊重するべき」という考え方に沿うようにする為にも必要な作業であるということが理解出来ると思います。
大げさな話でも何でもなく、ハオルシアに関しては品種名総覧の出版発表によって未来の世代へ「愛好者たちが生み出した品種という作品の名前」を保護し、伝えていくことになるでしょう。
事実ハオルシアでも起こった危機で、そのあたりの攻防は「あとがき」でも詳しく触れられています。
ネットを介した流通の拡大で植物の海を跨いだ行き来が増え、愛好者が情報を得られる環境が整うとこうした問題はもっと増えてきます。



絵画であろうと音楽であろうと作品を世に出す為には分野それぞれにフォーマット、マナー、分別があり、それが園芸品種については「品種名の適格性(基準違反で無いかどうか)と発表」ということだと思います。
個人的には「発表が有効なのはペーパーメディアのみ」というのも今の時代に馴染まないのも確かだと思います。
愛好者団体で書式を決めて PDF あたりで作出者に提出してもらってそれをネット上で管理する、とかでも良いかなと思いますね。
Google drive とかもありますし。

私は品種名や商品名の類いでも命名者に関しては公表されるべきではないかと思います。
どうも名前を使い出すための責任関係があやふやにするための理屈が多過ぎたり、うやむやになるようにする構造が出来ているような気がします。


品種名総覧は日本の園芸業界、特に多肉業界のマイルストーンとして重要な資料だと思います。
これを機にベンケイソウ科や他のジャンルの植物でも品種の有り方を考える良いきっかけとして戴きたいです。



こういった資料は作って「ハイ終わり」というものではなく運用・活用されてこそ真価を発揮するものです。
チャートを参考に品種名を考案したり、ラベルを整理に役立てて欲しいですね。
特に販売したりする方には顧客サービスの一環くらいの感じで。




今でも十分凄まじい仕上がりになっていますが、海外の品種名や最近発表された品種の追加やらでアップデートも計画されているそうです。
これも重要な運用の一環です。
「訂正なんかも積極的に行いたい」とのことで、間違いとかを見つけたらメールや掲示板、最近始まったツイッターとかで伝えるとありがたいそうです。

間違い探しが好きな私も一通り目を通してみて、この手の出版物としては流石相当ミスは少ないと感じましたが、それでも気づいた一点。
【レンズ】のスペルが【Lenz】になっています。
正しいスペルは 【Lens】 です。
(Lenz は基本的に人名。ポルトガル語とかドイツ語のスペルがナンタラとかいう類いではないです。)
この件についてはメールで問い合わせてみたところ、「どこかでそうなっていたのをそのまま採録して綴りを確認しなかったことによるミスでした」とのことでした。
確かに個人的にも何度も見たことあるし、検索してみてもかなり引っかかるんで日本の多肉業界で思い込まれがちな間違いなんでしょうかね。
そんなワケで 【Lenz】 は間違いなので 【Lens】 と脳内補完してください。
(外来語でも Renzu みたいにはしません。)




あと最近思ったのは基準表の「常用漢字以外禁止」の部分でしょうか。
主旨としては「変換出来なかったり日本語ではそうそう使われないような謎漢字はやめようね」ということだと思います。
「草なぎ剛」とか「イ・スンヨプ / 李承*(*は火へんに華)」みたいなことを防止するための措置だと思います。
“白瀧(はくりゅう)” の『瀧』がNG判定されていますが人名用漢字として使えますし、日常でも十分使われる漢字だと思うのでこの判定には疑問があります。
(個人的には「白瀧」の読みは一般的には「しらたき」だと思いますが出典のHaworthia Handbook のほうに「はくりゅう」と読み仮名がふってあるのかな?‘白竜’とで 「‘Hakuryū’ かぶり」なのはもちろんアウトだと思います。)

常用漢字はかなり少ないです。
他にも‘花篝’(‘Hanakagari’) の『篝』も常用漢字ではなかったりしますが、NG判定はされていません。
他にも『縞』『櫛』『鳳』『晃』『鷺』『薔薇』・・・とかいっぱい。
生き物系はだいたい表外漢字ですね。


表外漢字一覧(かなり重いです)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%A8%E5%A4%96%E6%BC%A2%E5%AD%97%E5%AD%97%E4%BD%93%E8%A1%A8%E3%81%AE%E6%BC%A2%E5%AD%97%E4%B8%80%E8%A6%A7


使用される漢字に制限を加えるための条文としては「“常用漢字”以外禁止」だと不都合が多くなるので見直しが必要かなと思います。
機種依存文字禁止・・・でもダメだなあ。
漢字の分類は難しいっすね。
あと禁止記号の例に『&(アンパサンド)』を明示、とかですかね。

まあそんなワケで、色々間違いやら発見やら改善アイデアやらが浮かんだ方はハオルシア協会に発信してみてください。
 
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まず、この本は図鑑や写真集のような内容を期待している人向きの内容ではないです。
(冒頭と表紙には最近の品種が50個体掲載・記載発表されてはいます。Haworthia ‘Azumi’ / ‘安曇’がカッコイイ!)
写真は無く、品種名そのもの名前のリストが大部分を占めています。
「品種名」という概念についても解説されているので、その辺りに関心のある方にも有用で読み応えのある資料になっていると思います。
分類面や園芸面でのハオルシア史も載っていてこの辺も楽しめました。



品種名を整理することによるメリットは最終的には『消費者・愛好者全員』に波及してきます。


『別々の名前で買ってきたのに育てているうちに同じものになってしまった』
『ネットで見掛けたアレが欲しかったから名前を確認して買ったのに期待していた植物ではなかった』


恐らく誰もが経験があるのではないかと思います。
これらの問題は名前が統一されていないことがその原因です。
こういったガッカリで不利益な現象を防止する為に必要な作業と資料なのです。


『ああ呼ぶということもあるし、こう呼ぶこともある』
『名前が違うんだから別物だよ』


というような説明を受けたことがある人もいると思いますが、これはキッパリ言ってしまえば方便(誤謬・詭弁)の類いです。


『よく確認せずに既に命名済みのものに別名を付けた』
 ⇒ (2重命名/同物異名/synonym)
『よく確認せずに同じ名前を使った』
 ⇒ (重複名/異物同名/homonym)


実際はこうであるケースが殆どです。


もちろんその確認をするには各所で発表なりされて散り散りになっている膨大な資料を参照しながら名前を決めなければいけなかったのも事実です。
しかし、これからは品種名総覧を元に品種名を考案すれば安易な重複名のようなケースは避けられると思います。


【2重命名/同物異名/synonym】も別表になって掲載されているのでダブり買い防止や手持ちの植物のラベル整理の役に立つと思います。
「アレとアレは名前以外に何が違うのか分からん!」「どっちが正しい名前なのか分からん!」「水晶だらけよく分からん!」みたいな疑問が解決していくのはなかなか面白いです。
「アレとアレ同じ植物だったんかい」っていうのもいっぱい見つかったり。
備考コメント欄や育成者と命名者も付記されていてこれも面白いですね。
「あ、そうだったの」みたいな発見がたくさん。
誰が使いだした名前なのかわかるようになっているのは情報面でも、責任的な面でも良いことだと思います。


食品偽装の件でもそうですが、「本質的に消費者には正しい名前で購入する権利」があるということです。
裏を返せば「売る側には正しい名前で売る義務」があるということでもあります。
スーパーで売ってる魚を学名で表示されても何だか分かりませんが、植物に関しては「学名と品種名がコレクターズアイテムとして相応の格式を備えた正しい名前」です。

食品偽装問題も「代用魚と偽装魚」の違いとか「優良誤認」とか色々参考になりそうなので気が向いたら調べてみようかなと。
『豆苗販売の「情報の非対称性」』についても考えたいところです。


続く。
 
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まず勘違いしていた話。

Echeveria aaaaa ‘Ccccc’
Echeveria bbbbb ‘Ccccc’

こういうパターン、つまり別種で同一の品種名を使用しているケースがエケベリアにはよくあります。
放置されたままなことが多いんで規約違反ではないと思っていたんですが、アウトだそうです。
簡単に言えば一般的に同属内で同じ品種名は使えないということ。
ハオルシアだと‘羽衣’が H. bolusii っぽいのとか大きめの H. blackbeardiana とか万象で使われてたかなと思います。
(「適応分類群内の重複名でなければ許容」みたいな話も頭の中でゴッチャになって勘違いしてた?)



有名なのが
E. pulvinata ‘Frosty’

E. leucotricha ‘Frosty’
とか。
ハンティントンかどっかの温室でもこんな感じの表記だったんで許容されるのかと思ってましたが、ダメみたいです。
前者に関しては「‘Suave’が本来使われるべき valid name」みたいなことが Shultz さんの本に書いてありますが・・・周知/認知されそうもないなあ。

他にも E. derenbergiiE. nodulosa で‘Painted Lady’という名前が使われてます。(日本で"ペインテッドレディ"で売ってるのは‘Ramillete’に見える)
まあここら辺がどこまで正式な品種名なのか、向こうでいう俗称的な名前(こっちで言う和名みたいなヤツ、向こうで言うcommon name みたいなヤツ)が品種名とゴッチャになっているのか微妙な部分ですが。



また同様に、
Echeveria agavoides ‘Maria’(1992, ISI92-45)
に対しての
Echeveria ‘Maria’(たまに半島経由で売られてる E. colorata の交雑品種)
もアウト。
種小名が有っても無くても(省略されていても)同じ品種ということでもある。
後者は E. ‘Cel Estrellat’に訂正・改名されている。
ダブり買いとかに気をつけよう。


これらはエケベリア同士なんで重複名/異物同名の later homonym として対処・処理されなければならない。
また、近縁の属間雑種で同一の品種名を使っているケースがたまにあるような。
具体例が思い出せないんですが、

Echeveria ‘Ddddd’
xGraptoveria ‘Ddddd’
xPachyveria ‘Ddddd’

みたいのがあったと思います。
ここら辺の属名は結構テキトーに表記されてたりするし、「品種名は分かりやすく整理されるべき」みたいな精神が ICNCP があったと思うんで、その点からするとあまり好ましいとは思えない。

そんなワケで新しく命名する際にはそこら辺の属間交雑品種に使用されている品種名やその類似名も出来れば避けるようにするのがエレガントじゃないかと思います。
 
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Aeonium arboreum ‘Albovariegatum’



まだまだ休眠明け。
割りと丈夫ですがちゃんと植え替えないと細くなってしまう。


Aeonium arboreum ‘Albovariegatum’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=10096&x270_id=3102

日本で言うところの『艶日傘』。
なんと最古の記録は1770年!

"Established as cultivar by B.K.Boom in Succulenta 38(6): 85. 1959."
と書かれていますが、これは1959年に B.K.Boom さんが Succulenta 誌(38号だか6月号だかの85Pとか)で cultivar として establish したということです。
この established というのは単純に和訳して「確立された〜」とかではなく、「国際栽培植物命名規約 (ICNCP) における "establish publication" が出版物掲載により為された」という風に受け取るべきではないかと思います。
つまり ‘Albovariegatum’ は要件を満たした確立発表/正式発表(establish publication)がされているので品種(cultivar)として確立/成立しているということが書いてあるワケです。
Aeonium arboreum ‘Albovariegatum’ という名前は保存されて品種の歴史の一部に残った・・・とかそんな感じです。
こんな感じの作業が1770年とかから続いてきていて、「規約の則った正名 = accepted name」があるワケです。
(昔は野生種での学名と園芸品種での品種名が区別されてなかったんで園芸品種にもラテン語で名前がついてたり、現在では‘シングルクォーテーション’で区別することが決まっている。)

EUなんかではこういう規約に則った名前の管理・参照をすることで品種の混乱を抑制しようとしています。
新しく作られた品種も同様。
品種名は学名の応用・発展形でキッチリとしたものということですね。
発表/出版の大切さがなんとなく伝わったんじゃないかなと思います。
もう少し用語とか根本的なところから説明したいですが、色々と歩調を合わせないといけないんでまたそのうち。


『艶日傘』という名前厳密には‘Albovariegatum’への2重命名ということになります。
本来正当な名前(正名)がある植物に別の名前を付けてしまっているということです。
根本的な規約違反。
1959年より早く cultivar として establish publication されてるとも思えないので Aeonium ‘Tsuyahigasa’ とかにはならないでしょう。
2重命名というより 「‘Albovariegatum’に対応している日本での販売名・通称名・いわゆる和名」くらいのほうが一般的な認識ですが、「正名はあくまでも Aeonium arboreum ‘Albovariegatum’ である」ということは忘れてはいけないことです。
これが抜け落ちると結局2重命名と何も変わらないです。
(推奨はされていませんが販売名(trade designation)として『艶日傘』という名前を使う場合、正名が併記されていなければならない)

こんな感じで「正しい名前」というのを判断していったりします。
正名とセットで収集してこそコレクションと言えるんではないでしょうか。


***

Aeonium arboreum ‘Luteovariegatum’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=10096&x270_id=3103
‘Albovariegatum’ との違いは正直よく分からないです。
名前からすると‘Albovariegatum’が白斑で、‘Luteovariegatum’が黄斑。
『艶日傘』も色んなところで見てきましたが、白っぽいのもあれば黄色っぽく見えるものも。
うちのも栽培していると黄色っぽくなったり白っぽくなったり。
黄色というよりは象牙・クリーム色でどちらかと言えば白に近いのと、その他の資料を見ても『艶日傘』は‘Albovariegatum’の可能性のほうが高いようには思います。


Aeonium arboreum ‘Zwartkop’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=10096&x270_id=3090
同様に『黒法師』の正名。
全部真っ黒になるヤツ。


Aeonium arboreum ‘Atropurpureum’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=10096&x270_id=3101
真っ黒になりきらないのは黒さの程度に拘らずだいたいコレ。
中心が緑のとか紫っぽいのとか茶色っぽいのとか。
あんま使わないけど『闇夜傘』なんて通俗名も昔からある。




茶色のは日当たりのヌルい『黒法師』ではなくて、‘Atropurpureum’だから茶色。
黒いタンニン色素は斑みたいに抜けたりするので、最終的には真緑のヤツに先祖返りしてしまう。
同じ株から茶色と緑の枝が出たりする。
葉緑素の量とかが違うんでロゼットの形がそれぞれ微妙に異なるけど葉先の形を見ると大元は同じ植物なのがわかる。


純粋に A. arboreum のセレクトかと言うと微妙だったり古すぎてよく分からないです。
http://1911.seesaa.net/article/221035084.html


とりあえず「出版済みの正名っていうのを使うのが良いんだな」とか思ってもらえれば。
また、出版されていない=未発表の植物が増えすぎるとどうなるか・・・という具合です。
 
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Echeveria "Lau-lindsay"
( E. colorata ‘Lindsayana’ x laui , Japanese cultivar, unpublished/unestablished prob.)



コッテリ用土+5号鉢にしたら間延びしたままになってしまいましたよ。
去年は肥料たっぷり路線の実験を兼ねていたんですがさすがにこのサイズの鉢なら土はもっと辛くしておくべきだった。


ニコイチというと「ポンコツ2つから部品取りをして1つの正常個体を作ること」という意味が強いですが、合成語・混成語だとちょっとピンと来難いんでニコイチ名と呼びます。
breakfast と lunch で blunch とかそんなヤツです。
こんな感じの命名は業界を超えて伝統的に非常に多いです。

ライガー(ライオン+タイガー)
タイゴン(タイガー+ライオン)
レオポン(レオパード+ライオン)

動物の雑種ではこんな感じ。
多肉でも

xGraptoveria ‘Amethorum’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=155&x270_listsearch=1
E. purpusorum x G. amethystinum

Echeveria ‘Pulv-oliver’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=493&x270_listsearch=1
E. pulvinata x Oliveranthus elegans (now, E. harmsii )

Echeveria ‘Set-oliver’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=968&x270_listsearch=1
E. setosa x Oliveranthus elegans

Echeveria ‘Deren-oliver’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=486&x270_listsearch=1
Oliveranthus elegans x E. derenbergii

Echeveria ‘Pulvi-carn’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=877&x270_listsearch=1
E. pulvinata x carnicolor

Echeveria ‘Pulvi-set’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=879&x270_listsearch=1
E. pulvinata x setosa

Echeveria ‘Spruce-oliver’
http://crassulaceae.ch/index.php?TPL=113&x270_id=1004&x270_listsearch=1
E. quitensis var. sprucei x Oliveranthus elegans

などなど。
(ハイフン後は小文字になるはずなんだけど例外が認められるんだろか?改正でもあったのかな?ICN は種子親・花粉親テンコシャンコっぽいときもあるような)


日本産でも"ラウリンゼ"とか。
根岸交配の命名も基本的には両親の名前の一部を組み合わせてたものが多いです。


ニコイチ名は架空の造語という面はそれなりに持ち合わせていますが、これはあくまで親の名前を2つくっつけているだけなので組合わせを略記で示しているのか品種名そのものなのか分かり難いという面もあります。
品種名というのは組み合わせではなく、外観・形態的特徴に基づいて命名されるという前提を考えればやはり好ましくはない。
(同じ組合せなら同じ植物になるとか同じ名前になると考えている人もたまにいますがそれは間違いです)
同一の組み合わせの他品種との混同等にも繋がります。
重複名(異物同名/later homonym)や類似名(混同危惧名/parahomonym)にもなりやすい。
また、語呂の都合で花粉親が先に来てたりする場合もややこしいです。
規約違反はしてないものの、品種の数が多くなってくると不都合が出て来易い。

ハオルシアではよくある組み合わせ、"コンプトコレクタ" とか "スプリンプト" は個体名ではなく Group というよりも、もはやジャンルに近い概念になってます。
これらのニコイチ名はハオルシアでは正式な品種名がつくまでの暫定名として扱われるそうです。



また、そのまんまくっつけると語尾がラテン語形になってしまうケースも多くなります。
上に挙げた例なら ‘Amethorum’が -orum 。
近年出回り出したエケベリアの "ラウレンシス" とかもそうです。
【エケベリア ラウレンシス】とか書いてあったら普通は「-ensis だしラウなんとかっていう地名がついた原種なんだろうな」と受け取るのが普通です。
でもそんな種はなく、名前や外観からすると E. lauiE. chihuahuaensis 辺りで交配したものと推測できるのでそういう由来・命名の植物なんでしょう。
以前から疑問視していたんで質問してみたんですが、専門家の方によると「明文化こそないが、品種名にラテン語が禁止されていることや規約の目的を考えれば当然排除されるべき」とのことなのでこういう命名もやはりやめるべきです。
特に -ensis -ense というのは地名に由来したときとかに使われる語尾で、地名は把握するのが難しいので極力やめるべきです。
EUに渡ったりした場合、無効名と判断されて再命名されたり二重命名(double nomenclature)になる可能性が極めて高いので混乱の元です。
また主に韓国経由だと思いますが天体関連から品種名を取るケースが多くなっています。(出版・発表は置いておいて)
Sirius などは現代の一般名詞と十分言えそうですが Monocerotis とかになってくると英和辞典にも出てこないしかなりグレーな感じです。
人によってはアウト判定と感じるような単語も出来ればやめたほうが良いです。
天体はまんまラテン語だし、またカブり易いモチーフなので重複名を考慮するなら回避するほうがベターです。
神話関係も似たような感じ。

「親株が分かるような名前は確かに便利でもあるが配慮すべき事柄も多い」、という感じです。
信用出来ない名前で流通している株も多いし、その名前を継承させることになったりする可能性も考えると尚更です。
自慢の作品なら適格な名前を考案し、キチンと発表/出版してその品種名を保護してやるべきではないでしょうか。

根岸交配に話を戻すなら、独自性強めで問題無いものもあれば思い切りアウトなのもあります。
どれがアウトかエケベリア栽培している人全員がすぐに見当をつけられるくらいだと良いんですけどね・・・。



最近はクローンで増やされた個体だけでなく、産地名までついた原種の種子を実生した苗が流通することも多くなりました。
そのせいか産地名と品種名を混同するような手抜き(?)な表記が目立ってきました。(中には種小名まで)
「エケベリア エンシノ」とか書かれるとワケがわからないので止めるべきです。
実際に同列に扱うような人も出てきています。
【ECHEVERIA sp El Encino, Hidalgo】(Koehres 丸写し)とか【Echeveria sp. ――El Encino, Hidalgo ex Koehres】 とかキチンと表記するべきです。

仮名や漢字で表記する際も品種名なら‘シングルクォーテーション’で括るべきでしょう。
中には省略され過ぎて意味消失しているものもあります。
「エケベリア シエラ」とか表記されているのがそうで、 Sierra というのは「山」という意味しかないです。(なので品種名とも考え難い)
Sierra ○○ (Mt. ○○) のような産地の表記だったものの、「肝心の山の名前がない」というような状況です。

産地名は分類上でも重要や情報で、品種名とは全く性質が違います。
品種名に産地名を使うことは禁止されていますので、エンシノ(El Encino, Hidalgo)とかといった産地名に、もう片方の親の名前を組み合わせるような名前もやめておくべきでしょう。
Echeveria diffractens ――Palma Sola が "E. ‘パルメソラ’" とか E. unguiculata ――Miquihuana が "エケベリア ‘ミクイアナ’"みたいになってしまったのも似たような理由だと思うんで本来の価値を損なわせないように表記するべきです。
「ミクイアナって E. unguiculata のことじゃないか!」と憤ったことがある愛好家なら分かると思います。



ハオルシアの場合は原種なら学名よりナンバーや産地のほうがよっぽど重要だということが知られているんで、まあ大丈夫ですかね。
当然、他のどんな植物も似たような具合になると思います。
 
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Aeonium x casanovense
NATURAL HYBRID A. spathulatum x sedifolium ――Tenerife, supra Masca, Teno. (but it seems that in Palma.)
As Aeonium ‘Casanovense’ in CULTIVATION.



http://1911.up.seesaa.net/image/1911-2012-10-16T20:49:25-2.jpg
秋頃

パカパカ。
雪でも丈夫です。
A. spathulatum が高山性だかなんだかで耐寒性が強いからかも。




こういった野生雑種は記載だと Aeonium x casanovense みたいにラテン語ロワーケースの雑種学名で命名されてる。

http://www.ipni.org/ipni/idPlantNameSearch.do;jsessionid=0F152BB8A1C536A467A858812DB27147?id=77097032-1&back_page=%2Fipni%2FeditAdvPlantNameSearch.do%3Bjsessionid%3D0F152BB8A1C536A467A858812DB27147%3Ffind_infragenus%3D%26find_isAPNIRecord%3Dtrue%26find_geoUnit%3D%26find_includePublicationAuthors%3Dtrue%26find_addedSince%3D%26find_family%3D%26find_genus%3D%26find_sortByFamily%3Dtrue%26find_isGCIRecord%3Dtrue%26find_infrafamily%3D%26find_rankToReturn%3Dall%26find_publicationTitle%3D%26find_authorAbbrev%3D%26find_infraspecies%3D%26find_includeBasionymAuthors%3Dtrue%26find_modifiedSince%3D%26find_isIKRecord%3Dtrue%26find_species%3Dcasanovense%26output_format%3Dnormal

でもシュルツさんのアエオ本だと Aeonium‘Casanovense’みたいにすべて品種名(cultivar epithet)として機械的に置き換えられている。
以前はそれに倣って品種名として扱っていたけど、最近は「ラテン語の品種名はやっぱりあかんくない?」「原著の書き方に倣うべきちゃう?」みたいな感じがしてきてたので雑種学名で blog に載せてました。

そんなことから長らくどうするのが正しいのか数年くらい疑問に思ったり悩んでだりしていたんですが、この辺りのことはなかなか調べ難く。
それで先日専門の方に質問してご回答を戴きました!


雑種学名は自然雑種なら国際植物命名規約に、人工雑種なら国際栽培植物命名規約に従うことになります。また自然雑種を人工環境下で栽培植物として扱うときは国際栽培植物命名規約18.1、19.6、19.7条に従って種名がそのまま品種名(大文字で始まる)になります。



なるほど!
そういうワケで冒頭のような表記になりました。
スッキリ。
結局どちらでも間違いではなかったということなんですが野生雑種ならは記載に倣ったほうが良いかな、という感じです。


国際栽培植物命名規約18.1、19.6、19.7条(条文の詳細な内容は分かりませんが概要はある程度把握してます)というのは便利な面もあるんですが、変な解釈をするとクセ者になりそうな予感も。
それでもベンケイソウ科では便利な面のほうが多そうな気がします。
詳しくは後日書く・・・かも。
 
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例の話題の件について。
販売とかしてないですが雑種を作ってる人間の一人として書いておこうかなと。
事情を知らない人は何のことかよく分からないだろうし、問題提起・呼びかけの内容なので書き起こします(キャプしか見てないですが)。

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●雑交配種の氾濫
エケベリアの実生雑交の無線別苗が大量に出回り始めた。アメリカ、そして日本から。一応○○×○○と品種親名が出ていても並べてみれば両方につながり、各々の顔の区切りが判らない。混乱して面白さが無くなった。業者も困惑している。かつて日本でメセンの名園がコノフィツムの雑種をつくりすぎ、サボテンでもギムノカリキゥムでも同じことが起き、「優系ギムノを守る会」ができたが時すでに遅しでいづれもブームは去った。ランポー玉もその轍を踏んだ。今、世界的に人気のハオルシアが同じ道を進み始めた。きちんとした名前を残し、確立すべく日本ハオルシア協会が名称本を製作しているが世界同時進行の大波に追随できるか。「よい物のみを選択し、後に残す」を皆が実践しないといけない。
I.S.I.J. Newsletter No.169 より引用
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「親の組み合わせだけが書かれた(特に名前のついてない)苗」=「無選別苗」という前提で書かれています。
これは「名前付き=選抜された苗」「親の名前のみ=選抜落ち(に近い、名前をつけるほどの物ではない)」という慣例というか暗黙の了解があるからだと思われます。
(実際は業者でも個人でも色々と差がある。「選抜はしたが特に名前はまだないので親の名前を書いたモノ」は選抜されていようがいまいが、傍目から見れば「無選抜の苗」と受け取られてもしょうがないということ。数が多ければ尚更そういう印象を受ける。)
なので、「親の名前のみ=選抜落ち」が大量に売られているのが良くない、という主旨ではないかと思います。
それで “きちんとした名前を残し確立(する)” ことが “よい物のみを選択し、後に残す”
に繋がるということで後半ハオルシア協会の名称本(ハオルシア品種名総覧)について触れているのではないかと。
つまり「選抜してから名前をつけて売れ」ということを書いているのではないでしょうか。
誌面・字数の問題かもしれませんが『ハオルシア品種名総覧』を引き合いに出すなら、個人的には「選抜・完成度の問題」と「手続き・出版上の問題」が途中で若干すり替わり気味という印象。


選抜して名前がついていれば良い、ということでもないです。
完成度がどうのこうの、ということ以前に「出版・記載が伴っていない」というのが根本的な問題の一つではないかと思います。
品種(cultivar)は出版を伴ってはじめて正式なもの。
出版・説明がなされていないということは第三者から基準となるものがないので判断のしようもなく、選抜をしたとかしてないとか言ってもしょうがない。
名前をつけて品種として主張したいとしても、手続き上の不備があることが明らか。
(名付けている人は品種名には禁止行為や使ってはいけない単語なんかもありますがその辺りも把握して命名されていますか?広く認知されて市民権を得たとしても規約に違反した名前はいずれ問題になります。)

もちろん今日となっては正式に出版された品種のほうが少ないということはわかってはいますが、だからと言って無視して良いということでもないでしょう。
一方でキチンと出版されたからこそ、名前が残っている品種というのが多数あるのもまた事実。
他の植物業界の事情は詳しくありませんが品種管理に厳しい蘭(食虫植物も?)で同じことをすればより厳しい批難を浴びるのではないでしょうか?
この手の問題に敏感な人はたぶんどこにでもいると思います。
出版のハードルが高いのは承知ですが、ある程度代替手段を講じておくのも混乱解消の役に立つのでは。


参考リンク:
○品種名等暫定リストについて(品種というものについて説明されているので必読)
http://www.haworthia.net/about%20the%20list.pdf
○日本ハオルシア協会
http://www.haworthia.net/


エケベリアよりハオルシアの雑種のほうがよほど氾濫していると思うけど(顔と名前が一致しないものはベンケイソウ科のほうが多いか)、とにかくハオルシア協会が優良なものについては品種として出版したり膨大な労力を費やしています。
物理的な作業以外にも業者や個人趣味家・育種家との軋轢というか摩擦や苦労が見え隠れしているというか(実際はわからないですが)。
私がハオルシア協会に好意的なことを書いているのは、日本の多肉業界が疎かにしがちな「品種確立についての規約に則った正しい方法・手順」ついて切り込み、遵守しようとしていることへの敬意からです。
いずれ議論が起きるべき内容だったと思うし、その契機になったことも重要な功績だと思います。


◆出版無しで自前で作った雑種に“名前をつけて流通させる・販売する”
―本質的な問題はここにあると思う。
―需要があるとかないとか置いておいて恐らく規約上誉められる行為ではない。
―何か具体的な規約に違反してるか非推奨行為扱いされている・・・のではないかと思うんで資料転がってないか調べてるんだけどしんどいので誰か教えて下さい。

業者か個人かという点について、「生活の為なんだ」と業者の人に言われてしまうと・・・。
個人的に議論というか相談してみた結果としては物理的なこととか、あの辺の関係とか・・・色々と難しいそうです。
ボヤかして申し訳ないんですが諸々察して欲しいです。



【"雑交配種"という呼び方について】

『雑種』・『交雑種』というのは正しい用語。
種(species)のレベルとしてみると純粋な原種ではなく、雑種。
『雑交配』というのも意味としては『交雑』と同様に使われている言葉。

『交配種』というのは【雑】という字のネガティブな印象を嫌う人たちが使っている言葉・・・とかそんな感じ。
イヌ・ネコでいう『ミックス』とかそんな呼び方に近い印象。
hybrid も訳は雑種。
ハイブリッドとカタカナで書けば【雑】という字を使わないだけマイルドになったとかそんなことだろう。

交配・・・(主に人為的な)受粉作業。雑種にするかどうか基本的な焦点ではない。
交雑・・・雑種になる・雑種にさせること。2つ以上の種が混ざっていることが焦点。

こんな感じのニュアンスが多数派。
『交配種』も辞書に載り始めているみたいだけど、まだ簡単で曖昧な説明になっている。
http://kotobank.jp/word/%E4%BA%A4%E9%85%8D%E7%A8%AE
なのでこの blog では『交配種』という言葉は使わずに人為的に作られたものでも『雑種』という言葉を使うようにしている。
(自然下のものは Natural Hybrid とか書いて区別してる)
科学的な分野の一部なんで出来るだけ正しい用語を使いたい。
間違った使い方してたら教えて下さい。

とりあえず【雑】という字に過剰反応するのは違います。
今回の件でもそうですが出版物の責任者が【雑】という字に反射的に目くじら立てて噛み付く人間との面倒事を回避するため意図的に『交配種』という言葉を使って配慮しているケースや、人為に作られた的な面を強調したいので使ってるケースがあるというのも想像できますが。

でもまあ国際ではサイトや写真集を見る限り『交配種』という言葉を使ってることが多いようなので、今回使われている『雑交配種』という言葉は会報の文章全体からするとマイナス印象をこめて批難の意味で使っていそうではあるけど。
交雑(種)=雑交配(種)ということで使っているというよりは、「雑種を作る交配」というより「雑な交配から出来たモノ」という意味を匂わせる書き方に見えなくもない。
普段どんな内容なのか知らないし、本来は特にネガティブなイメージの単語ではないので邪推ですが。



それよりも個人的に気になるのは「正名のあやふやなモノを親株が使われる」こと。
前から主張していることですが花粉ポフポフより優先すべきことがあるのではないかと。

この blog でも時折触れてきていたことだけどラベル・表記のことと、cultivar/出版
のことについては近いうちに意見まとめてを書こうと思って少しずつまとめてたたんですが良い機会なんで一部載せました。
“ブームが去る”ということについても考えるべきところは多いけど今回は長くなりすぎたんで今度にします。
 
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